この記事の結論
- 調停は裁判ではありません。裁判所を借りた話し合いです。
- 話し合う順番は6段階に決まっており、飛ばせません。
- 裁判所が嘘を暴いたり、隠し財産を探したりはしません。証拠を出すのは相続人自身です。
遺産分割調停とは、家庭裁判所で相続人どうしが話し合う手続きです。
裁判とは違います
| 裁判 | 双方が主張と証拠を出して争う |
|---|---|
| 調停 | 話し合い。調停委員が間に入って手助けする |
当事者だけで話すと、感情的になったり、何が正しいのか分からず進まなくなったりします。そこに調停委員が入り、まとまるように手助けをします。
どこの裁判所で行うのか
相手方の住所地を管轄する家庭裁判所です。
相続人が離れた地域に住んでいる場合、どちらが申し立てるかによって、行く裁判所が変わります。申し立てられた側が遠方まで出向くことになります。
審判から始めることはできるか
申し立てること自体はできますが、裁判所の判断でまず調停に付されるのがほとんどです。
審判を行う裁判所は、原則として相続が始まった地を管轄する裁判所です。調停が別の裁判所で行われていた場合は、そちらへ移すか、調停をした裁判所でそのまま審判を行うか(自庁処理)を決めることになります。
知っておきたい2つのこと
相続人以外は入れません
話し合いだけの協議では、相続人の配偶者や子どもが口を出すことがよくあります。
調停は違います。調停室に入れるのは相続人と代理人の弁護士だけです。
ただし、相続人が高齢などで付き添いが必要な場合は、親族の入室が認められることもあります。
裁判所は調べてくれません
期待して臨むと、がっかりします
裁判所が、誰が嘘をついているかを明らかにしたり、隠し財産を探したりすることは一切ありません。
調停の主役は相続人自身です。裁判所は話し合いを支えるだけです。
相手が嘘をついていると考えるなら、それを示す証拠を自分で出す必要があります。隠し財産も、自分で探すことになります。
話し合う順番は決まっています
最初に相続人全員が調停室に呼ばれ、調停委員の自己紹介と本人確認、手順の説明があります。
その後は、次の順で進みます。
①〜③は前提問題。ここで決着がつかないと、④へ進めません。
この順番はかなり厳格に守られます。特別受益や寄与分を早く主張したくても、④まで進まなければ扱ってもらえません。
①〜③で争いがあり話がまとまらない場合、調停は中止し、別の裁判で先に決着をつけることになります。
① 相続人の範囲
養子縁組や結婚が無効である、隠し子がいる、といった主張が出た場合です。
まとまらなければ、裁判で誰が相続人かを確定させます。ただし、ここで争いになる例は多くありません。多くは簡単に確認して終わります。
② 遺言書・遺産分割協議書
すべての遺産の分け方が書かれた遺言書や協議書があれば、本来は分割の必要がありません。
それでも、一部の相続人がその有効性を疑っていると手続きが進まず、話し合いのために調停が申し立てられることがあります。
調停では、有効か無効かを判断してもらえません。そこが決まらないと分け方を話せない場合は、遺言無効確認訴訟などを別に行うことになります。
③ 遺産の範囲
亡くなった方の名義だが実際は別の人のもの、あるいはその逆、という主張が出た場合です。
これも調停や審判では判断してもらえません。まとまらなければ、遺産確認訴訟を別に行う必要があります。
④ 遺産の評価
預金や現金なら評価は不要です。不動産や株式は、いくらの価値があるかを決める必要があります。
特に不動産は、相続人ごとに主張する金額が違うことが珍しくなく、争いになりやすい部分です。
⑤ 各相続人の取得額
評価がまとまったら、特別受益や寄与分があるかを話し合い、それぞれの取り分を決めます。
⑥ 分割方法の調整
取り分が決まったら、誰がどの財産を受け取るかを話し合います。
すべて預金と現金なら、割合に応じて受け取るだけです。不動産があれば、売るのか、誰かが取得するのかを決めます。
理屈のうえでは最後の話ですが、④の評価と結びつくため、実際には④を話す段階である程度決まっていることが多くなります。
証拠を出すのは、こちらです
裁判所は調べてくれません。何を主張し、どの資料を出すかで結論が決まります。順番が決まっているぶん、どの段階で何を出すかの組み立ても重要になります。申立ての前でも、呼出状が届いた後でもご相談ください。
